体験談(約 21 分で読了)
イケメンだけどチャラいと噂の営業部員(1/3ページ目)
投稿:2012-10-26 15:00:00
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本文(1/3ページ目)
2人とも法人相手のルート営業。
部署は違う。
一緒になった事もない。
そんなに大きい会社ではないのでお互いの存在くらいは知っていた。
彼は社内ではイケメンの部類に属していて、上からも可愛がられ、下からも慕われるタイプの人間。
チャラいという噂もあった。
一方私は同期からは浮いていたが、中身が女らしくないので扱いやすいとオッサン共からは可愛がられており、どうやらそれなりに社内で名は通っていたらしい。
スペックは、私25歳の入社4年目。
顔は水川あさみだのユッキーナだの色々言われる。
化粧後の評価なので文句は受け付けない。
彼は30歳で入社8年目。
櫻井翔に似てるとよく言われるらしいが私が思うに全く似てない。
社内でイケメン扱い(疑問)当時は私23歳で2年目、彼は28歳で6年目だったよ。
うちの会社は個人業績を競うコンテストが半年毎に開催されていて、彼は入社以来そのコンテストを落とさず取り続けるトップセールス。
それとは別で開催される海外旅行が報奨のコンテストも入賞常連。
とにかく売れてる人だという事は知っていた。
そして私の同期にマンツーでOJTする先輩社員という事しか知らなかった。
自分で言うのもなんだが私もまた売れていた。
新人の頃から業績コンテストも連続入賞し、報奨旅行も毎回参加していた。
業績コンテストに入賞すると、表彰式と銘打った昼から飲んだくれるパーティーに招待され、報奨旅行に入賞すると、旅費や宿泊費、食事代を全て会社が持ち、特別休暇扱いで人が仕事してるのを尻目に海外に行けるご褒美がある。
私と彼はお互いに
「あの人もいつもいるな」
という印象だった。
2年前のハワイ旅行にも、例の如く彼はいた。
その頃の旅行コンテストのルールはチーム入賞がメインだが、成績が顕著な営業は個人入賞で招待される事もあり、私はチームで入賞し、彼は個人入賞で来ていた。
報奨旅行では必ずウェルカムパーティーがあり、あの時のハワイ旅行のパーティーはホテルのプールサイドで開催された。
大抵の場合はチーム毎にテーブルについて盛り上がるものなのたが、若手の女子が少ないので社長のテーブルにつかされ、私はチームのメンバーと離れてしまった。
社長のテーブルには個人入賞枠のメンバーがおり、そこに彼もいた。
その時は意識もしていないし興味もなかったので、はっきりいってほとんど覚えていない。
部署も同じになった事はないし、絡んだ事も今までなかったから愛想笑いで一言二言交わしたくらいだと思う。
円卓だったのだが、席もちょうど反対側で遠かったし、みんなで盛り上がる話以外で個別で話す事はなかった。
覚えている事といえば、仲の良い先輩も同じテーブルにいたので、
「彼氏とはうまくいってんの?」
的な感じで恋愛話を振られた時に、たまたま出国前日に破局していた話をした事。
私は当時、学生時代から4年以上付き合っていた人と旅行の直前にマンネリを越えられずに別れていた。
その話をした時に
「今は彼氏いないんだ?」
みたいな事を言われた事はなんとなく記憶にある。
旅行から帰国して半月ほどすると、今度は成績優秀者表彰式で彼と再会した。
表彰式は15時くらいからホテルで3時間ほど立食パーティーを行い、それが終わると個別で2次会、3次会、4次会‥と終電までひたすら盛り上がる。
何次会だか忘れたが、あの仲の良い先輩に誘われて私はカラオケに行った。
そこに彼もいた。
部屋には多分15、6人いた。
カラオケでは機材が故障するハプニングがあったが、場が冷めないように彼はバカやって盛り上げていた。
イケメン扱いの男共はEXILEとかコブクロとか歌うのに、彼は矢島美容室をドヤ顔で歌った。
しかもデカい声で。
その時に初めて、
「この人ってこんな人なんだ、面白い。売れてるのに鼻にかける感じはないんだな」
と思った。
その日の帰り、ホームで電車待ちしてたら声をかけられた。
どうやら同じ路線だったらしく、私より2駅先に住んでいた。
同じ路線の人も何人かいたので、皆で話しながら終電を待っていた。
その路線利用の仲良いメンツで度々飲んでいるとかで、今度からそれにおいでよと誘われて、その時ごく自然にさらっと連絡先を聞かれた。
さすがチャラいだけはあるな、と思ったが、他の人がいる前で堂々と聞いてきたし、チャラ男に抵抗ある処女とかでもないので別に気にはならなかった。
翌日彼から初めてのメールがきた。
「どさくさ紛れに連絡先聞いてごめんね、今度よかったら遊びにいかない?」
とかそんな感じの。
私も適当に社交辞令で返した。
彼氏とは別れたばっかで新しく作る気もさほどなく、ただ色んな男性を知りたい、遊びたいという気持ちはあったが、デートが実現するとは思っても見なかったし、一人暮らしでいつも暇なんで誘ってください的な返答をした。
先輩社員だし当たり障りなく返しとくか、という事だけ考えていた。
それから毎日のように1日数件のメールのやり取りをした。
たまに電話もきた。
分かった事は、彼も一人暮らしだという事。
彼女とは数ヵ月前に別れた事。
最近姪が生まれたので、毎週のように土日は車で2時間の距離の実家まで帰っている事。
実家に帰らない時は、家電が好きで電器屋によくいく事。
噂のチャラ男という印象はあまり感じられなかった。
ある日、
「紅葉を見に行きたいんだけど一緒にどう?」
と誘われた。
遠足かよ!と思ったけど、それはそれで田舎育ちの彼の良さが滲み出ているような気がした。
OKするとすぐに
「じゃあ今週末行こう!」
と若干カカリ気味なのも面白かった。
やっぱこいつチャラ男なのか?
「どこか行く宛があるんですか?」
と聞くと、
「詳しくないから調べとくね!決まったらまた連絡する!」
との事。
そうして初デートは紅葉狩りになった。
当日は朝10時に待ち合わせし、彼の車に乗せてもらって出発した。
車に乗るなり彼は何か紙を手渡してきた。
旅のしおりだった。
まじで遠足w
ツボった。
小◯生以来の旅のしおりに衝撃を受けた。
旅程表と立ち寄り先のWebサイト情報、地図が載った手作り感満載のものだった。
A3に割り付けてプリントアウトし、ご丁寧に製本してあった。
「仕事中これ作ってたんですか?」
と聞くと、
「バレないかヒヤヒヤだったよ〜」
と笑っていた。
2人きりで過ごすのは初めてで、普段緊張しない私もさすがに少し緊張した。
元彼との付き合いも長かったし、こういう恋愛前の距離詰めのデートは5年近くしていなかったのでちょっとドキドキした。
しかも相手は一緒に仕事した事もないし勤務地も違う他部署の先輩。
私の事をどう思ってるのかもまだ分からない。
お互いかなり探り探りだった。
しばらく走って高速のインターに差し掛かり、ETCゲート越えた瞬間に彼が急にテンパりだした。
「え!!これ右?左?どっち!?」
用意周到にしおり作ってきたのにわかんねーのかよw
行き先的にどう考えても選択肢一つだろ!と思ったけど、先輩だしもともと仲良かったわけでもないのでツッコめず、誘導するしかできなかった。
仕事のできるイケメン先輩社員が、重度の方向音痴だと知って萌えた。
車の中では仕事以外の話を色々した。
家族の話、学生時代の話、続けてたスポーツの話。
結婚のけの字もなかった彼の地元の友達が、ここ最近立て続けに結婚しだした事。
誰も聞いてないのに、
「あっ!でも俺は別に結婚焦ってるとかではないんだけど!取り残されたけど!」
といちいちテンパるのも見てて面白かった。
彼は先輩風を吹かせる様子もなく、ドヤ感もなく、これを計算でやってるとすれば相当な強者だが、社内で言われているチャラ男疑惑がだんだん薄れてきた。
まぁ当時の私にとって本当にチャラ男かどうかなんてどうでもよかったんだ。
別にお互いフリーだし。
社内でそういう噂が経つほど目立つ人だったって事だろうな。
デートはというと、彼の方向音痴が炸裂して旅のしおり通りには行かず、昼飯も昼時に食べられず、予定していた場所は閉まっており、こう書くとまるで散々なように思えるが、そういうハプニングも含めて結構楽しかった。
夜も更けてきた頃、また彼が急にテンパり出した。
何事かと思ったら、ガス欠しそうだヤバい!!との事。
これ泊まりの流れなのか?とも思ったが、知らない地なのでとりあえずコンビニで近くのガソスタを聞くのはどうかと提案し、クソ寒い中エアコン切って走り出した。
私は基本的にどうにでもなるだろうという楽観的な考えの持ち主なので、本当にガス欠するとは思わなかったし、彼の車の燃費考えたら、1リッターあれば8キロ走るんだからなんとかなりますよ、と励ました。
結局無事に給油はできたものの、その時点で既に22時近くになっていた。
自宅に帰るには2時間程度はかかるだろうし、これはもう完全に泊まりがけだなと思っていたのだが、彼は
「本当にごめんね、初めて二人で遊ぶのにこんな遅くまで連れ回して」
と申し訳なさそうに言って車を出し、きちんと家まで送ってくれた。
しおりがきちんと役目を果たせないまま初デートは終了したが、私としては久々のデートで相当楽しかったし、また二人で会いたいと思った。
デート中も
「次は◯◯に行きたいね」
「あの映画見たいね」
「◯◯もしたいよね」
とかなり盛り上がった。
次の誘いは鍋パだった。
スーパーで材料を買い込んで、彼の部屋にお邪魔した。
手伝おうとしたが断られ、リビングでテレビを見ながら待っていた。
久々の鍋は相当美味かった。
一人暮らしだと早々鍋する事もないし、人と夕御飯食べるとやっぱりなんでも美味しいなと思った。
楽しい時間はすぐに過ぎていって、気がつくと結構遅くなっていた。
その日も彼に迎えに来てもらった私は、送ってもらわないと帰る足がないのに、なかなか帰りたいと言い出せなかった。
そろそろ帰らないと明日も仕事だしまじやべーなとか思ってるところに、
「ごめん、そろそろ送らないといけねいよね」
と切り出してくれて内心ホッとした。
そうは言いながら彼は話を変えた。
「こないだドライブした時にさ、彼氏はいらないって言ってたけど、今は全然恋愛する気ないの?」
そういえばそんな事言ったな。
何の気なしに、そんな受け答えをした事は覚えていた。
確かに元彼と別れた時は、自由を謳歌しようとか、合コン行きたいなとか考えてて、特定の彼氏を作る気はあまりなかった。
でももしこの人が本気で私を彼女にしたいなら、面白そうだからいいかもしれないと思った。
でも別れたばっかだし、誰でもいいから彼氏ほしいとかいうのとは違うし、何て答えていいか分からなかった。
完全に彼を意識し出していた。
「いや〜どうでしょう、いい人がいれば気が変わるかもしれません」
とかなんかそんな感じで答えた。
少しの沈黙の後、また彼が喋りだした。
「こないださぁ、次はどこ行きたいとか色々話したじゃん。あの日俺すごく楽しかったし、これからも色んなとこ出掛けたり、色々したいんだけど‥」
「彼女でもないのにデートとかすんの悪いしさ!」
と緊張してカミカミで言ってきた。
なんて真面目!
付き合ってなくてもデートくらいあるだろ!
と思いつつも、やっぱりチャラ男じゃなかった、と再び萌えた。
それだけ真面目発言しておきながら、肝心の
「付き合ってください」
というフレーズは照れ臭かったのかなんなのか、社内用語でふざけて告ってきた。
「代替していいですか?」
的な意味合いの社用略語。
どっちかっつーと新規契約だろと思って思わず笑ってしまったけど、私はとても嬉しかった。
社内で人気の先輩は、今私に夢中なんだと思ったらなんだか優越感すら感じた。
彼の言葉によろしくお願いしますと返したら、
「ダメだ〜我慢できないゴメン!」
と言いながらキスしてきた。
それが彼との初めてのキス。
ただの会社の先輩から彼氏になった瞬間だった。
彼の家とは偶然にも車で10分ほどの距離だったのもあり、仕事帰りに毎日のように家に来るようになった。
通勤は電車なので、自宅に帰ってから車で私の家に来て、2人でご飯食べて寝て、早朝に自宅に戻ってまた電車で出勤。
そんな訳の分からん生活をしばらく続けていた。
休みの日はいろんなデートスポットにでかけた。
地元の友達が都内に遊びに来ているからと紹介されたりもした。
全く知らない友達に彼女として紹介されるのは初めてで、凄く嬉しかった。
彼は競馬が好きらしく、初めて競馬場に連れて行かれて、生でジャパンカップを見た。
ブエナ速かった。
降着したけど。
競馬なんて興味なかったし、廃人のいく場所だという先入観があったけど、府中はとても綺麗で家族連れやカップル、若い子達も多くて意外だった。
私は未だに賭けはしないけど、競馬という私が今まで知らない世界を見せてくれた。
クリスマスは出掛けたりプレゼント交換こそしなかったけど、美味しいと評判のケーキ屋でピスタチオのムースを頼んでくれていたので、ちょっといつもより手の込んだ料理を作り、お酒を飲みながら家で二人で過ごした。
年末年始はお互い地元での恒例行事があるのでそれぞれ実家に帰省し、付き合ってからほぼ毎日一緒にいたのに初めて一週間以上離れて過ごした。
離れている間と言えば、私は大学の友達とのオール飲み会やら、小◯校からの友達と毎年行ってるボードやら、はたまた親とも雪山に行ってみるやらで休暇を満喫し、彼もまた小◯校からの同級生で旅行行ったり姪にデレデレしたりなんだりで、お互い充実した休みを過ごした。
年末年始休暇も終わり、仕事が始まってしばらくすると、彼に昇進試験のチャンスが舞い込んだ。
うちの会社の昇進試験は、これまでの業績やプロセス面の評価条件を満たし、直属の上司に推薦してもらう事から始まり、課題に則した論文を事前に用意して、人事に提出後に役員との面接で判断するというもの。
この論文が結構厄介で、皆過去の先輩達の論文を参考にして書く。
だけど、業務とは関係ないので就業時間中は書いちゃダメ(当たり前だけど)。
セキュリティ厳しいのでPC(うちの営業はみんなノート)持ち帰っちゃダメ。
おまけに一時提出が短納期なので夜中までサー残、および金にならない休日出勤せざるを得ない。
苦労して書いても何度も提出前にダメ出しを喰らいまくった挙句、酷ければ全部書き直しという地獄。
要領のいい人や文章能力の高い人ならばまあ内容的に楽じゃないとはいっても何とかなるのだろうが、残念ながら彼は作文がド下手過ぎた。
普段のメールでも、そんなとこに句読点いらねーよ!と思うほど句読点のオンパレードで、もし声に出して読んだら肥後が真似る森本レオ並に話が先に進まないレベルで句点を打ちまくる。
その上文章にメリハリがなく、表現も同じものを使いまくるので、◯◯でした◯◯でした◯◯でしたと、韻でも踏みたいのかと言わんばかり。
論文の内容の良し悪しについては、私は上司でも人事でも面接官でもないので判断できないが、年下の私でも国語の誤りは指摘できる。
就業時間中に取りかかるのは原則禁止とは言われていても、何だかんだみんな多少は手をつけたりしているが、生真面目な彼は仕事は仕事できちんとこなし、業務が一段落してから毎晩遅くまで一生懸命論文を書いた。
そしてある程度書き上がるとそれを印刷してこっそり持ち帰り、なぜか上司より先に私に見せてくるので、例によって例の如く怒濤のダメ出し。
もちろん内容には一切触れないが、
「ここ日本語おかしいよ」
「こんなに句点いらない」
「句点打たなきゃ違和感あるなら、こういう表現使えば句点いらないし同じ内容伝えられるよ」
と、それはまるでカテキョのように(カテキョした事ないから知らないけど)昇進しない私も毎晩手伝った。
私が手直しする前に上長に見せると何だか微妙な反応をされた箇所も、翌日私のアイディアを取り入れて書き直すと好評をもらえたらしく、若干不服そうな顔で帰ってきたりしたが、そんな日でも結局私に添削を頼んできた。
そうして頭を悩ませながら毎晩日を跨ぐまで論文を少しずつ書いていた。
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