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彼氏の先輩と浮気した回(1/3ページ目)

投稿:2023-09-15 18:07:30

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本文(1/3ページ目)

鴻上蓮◆JXVEEYQ(千葉県/20代)
前回の話

大学を卒業してからビジネスホテルに就職して約1年。正直、横柄なお客さんも多くて嫌になることが多い。最近はなんだか、体の中で雨が降っているような、ざわざわした気持ちになることがたくさんある。休日前の仕事終わりには、新宿に1人で飲みに行くことがほとんどだったが、コロナが流行り始めて、マスクをして…

窓を開ける音がして目を覚ます。

「おはよ〜」

網戸を閉めながら、拓也がこちらに目をやる。

「おはよう、もう11時半だけど」

「うそ、ごめん」

確かにもう日が高くなっている。

「いや、俺もさっき起きたとこ」

笑って答える顔が優しくて私も笑顔になる。

開いた窓から入り込んでくる日差しと風が暖かい。暖かいというか、少し暑い。9月になったというのにまだまだ汗ばむような日が続いている。

忙しい夏休みシーズンが終わって、昨日から5日間、遅めの夏休みだ。昨日は夕方から拓也が家に遊びに来てそのまま泊まってもらった。

拓也とは付き合ってもうすぐ半年になる。

「今日、本当に大丈夫?」

「ん?うん、楽しみだよ。ご飯食べたら準備するね。」

今日は拓也の先輩の家で飲み会の予定だ。私も顔見知りの大和くんも来るみたいだし楽しみにしているが、拓也の心配そうな顔が気になる。

「先輩、怖い人なの?」

「いや、怖いっていうか、いや、楽しい人なんだけどさ、」

どうも歯切れが悪い。

「先輩、2人いるって言ったじゃん」

「うん、鴻上さんとタツさんだっけ」

「その、鴻上さんのほうがさ、あの」

「なに、何か悪いことでもしてるの」

「いや、違うよ。そうじゃないけど」

少し焦ったように言うから、こちらまで身構えた。

「なんか、あれだよ。ちょっとノリが軽すぎるっていうかさ、失礼なこと言ったりしないか心配で。」

「なんだ、そんなこと。気にしなくていいのに。」

それだけか、と安心したので朝食の支度をしようと立ち上がる。あぁ、いや、もう昼か。

「何かあったらごめん。」

「大丈夫、大丈夫。」

食パンをトースターで焼き、バターを塗って食べる。昼のニュース番組を2人で笑いながら見て、食べ終わったら歯を磨き、着替えて化粧を終えた。時計は13時12分を指している。

「何時頃に出ようって言ってたんだっけ」

「昼以降なら何時でもって事なんだけど」

「じゃあ、もう出てゆっくり向かおうか」

「うん。今から家出ますって連絡するわ」

2人で家を出て、今日これから初めて会う2人の先輩の話を聞きながら歩いて駅へ向かい、電車に乗る。

目的の駅に着くと、そこから少し歩いたところで鴻上さんの家というマンションに着いた。

「ここだよ、ここの7階。」

「えっ、ずいぶんとまた…」

「やたら金持ちなんだよな」

思っていたよりも、駅から近くて立派なマンションだったので驚いた。

エントランスにあるインターホンに、714と入力して鳴らす。

「はいよ」

「拓也です」

「おぉ、早かったな。今開ける。」

「ありがとうございます」

曇りのない自動ドアがウィーンと開いた。上品な外観に目をとられる。7階まで上がり、部屋に着いたのでまたインターホンを鳴らした。

「開いてるよ〜」

「はい」

ドアを開けて部屋に入るとスラッとした男性が歩いてきた。

細く伸びた木の先に白木蓮が花を咲かせるように、頭が乗っている。黒い髪には緩くウェーブがかかり、センターで分けられた前髪から重心を少し目尻に寄せた丸みのある目が真っ直ぐにこちらを縛るように向けられていた。

その視線に拘束されて動けなくなったのも束の間、私と目が合ってすぐに彼の口角がふわりと上がった。うっかり心臓が騒ぎ出すのを悟られないように努める。

「初めまして、鴻上蓮です。蓮でいいですよ。」

「あ…私、拓也と付き合ってます、紗季です。」

「紗季さんね。今日はありがとうございます。」

「あ、いや、こちらこそ。どうもありがとう。」

聞いていた話よりも礼儀正しいし謙虚そうで、綿花のように軽やかな笑顔にも、喉の奥をきゅんと締めつけられるような思いがした。

「ヤマはまだですか」

「うん、でも、14時くらいに着くって言ってたから、もうすぐじゃねぇの」

廊下を通り、リビングに通されると、綺麗に整ったキッチンの前に小さい机と椅子があり、その横の広いスペースにテレビに向いた形でソファとテーブルがあった。リビングの横にはパーテーションで仕切られた和室まである。通ってきた廊下を考えると、この他にも2つ部屋がありそうだった。

何故、大学4年生の男の子が私より良い家に住んでいるのか。

大学での拓也の様子を聞き、笑いあってるとチャイムが鳴った。

「ヤマかな」と、蓮くんが対応する。

少しすると大和くんが部屋に着いた。蓮くんが玄関の方に行き挨拶を済ませリビングに2人で入ってくる。

「おぉ、お久しぶりです」

「久しぶり」

「最近あんまり来てくれなくなったってあすかちゃん泣いてましたよ。薄情なんだから。」

「大袈裟な。それでも月2回くらいは行ってるんだよ。」

確かに、大和くんと話すのは懐かしい感じがする。

「紗季さん、何飲みます?」

キッチンにいる蓮くんから声がかかった。

「あ、どうしようかな。」

「種類、こんな感じなんだけど」

手招きされたのでキッチンに向かう。トコトコと歩いて行くのは少し緊張して心が弾む。が、見せてもらうとぎょっとした。ホワイトホースとダルマが1本、無くなりかけのジャックダニエルと新品がもう一本。赤ワインが2本半と白ワインがまるまる1本。見知らぬ瓶が1本。あとはダンボールに入ったウィルキンソン。この量の酒があることよりもむしろ、缶がないことの方が不気味だ。

「これなに?」

「それね、ジン。飲んでみます?」

「いいの?」

「もちろん。」

「じゃあお言葉に甘えて。」

「割りますか?炭酸水とコーラしかないんだけど。」

「炭酸水がいいかな。ありがとう。」

「いいえ」優しく応える笑顔に言葉が詰まる。

「2人は?コークハイでいい?」

「あ、じゃあコークハイで。でも飲んじゃってていいんすか、タツさんは。」

「いいよ、あいつは。来るの夕方になるって言ってたから。」

それぞれの酒を持ち4人でソファに座る。

「ちょっと早いけど、乾杯」

話は思いの外盛り上がった。新宿によく飲みに行くと言うと、蓮くんはゴールデン街の店でバイトしていると教えてくれた。今度みんなで行きたいと言い合う。

全体に酔いが回ってきた頃、ドアが開く音がしてハッとする。気づけば空が赤く染まっていた。

リビングに背の高い男の子が入ってきた。前髪を上げた短髪で、パキッとした眉に、目鼻立ちがくっきりしている。いかにも聡明そうな男の子。

「あ、拓也の彼女さん。龍本陸です。初めまして。」そう言って爽やかに笑った。

「初めまして。紗季です。」

タツくんは他の3人ともいくつか言葉を交わすと、キッチンに入り、赤ワインとジョッキを手に取り蓮くんの隣に座った。ジョッキ!?

拓也の顔を伺うが気にも留めていないようだ。ワインがあんなに置いてあったのはこの為か。

「おい、お前、ちょっとは控えめに飲めよ」

「いいだろ、いくらでも酒があるんだから」

「全部、タダってわけじゃねぇんだってば」

蓮くんが随分と楽しそうに笑った。

「紗季さん、こいつすげぇ金持ちなんすよ」

私に向かって言う。「あぁ、」と曖昧な声が出る。

「親に内緒でホストやってバカ程稼いでて」

「だから、」

蓮くんの、思わず、と言った感じで下を向いて笑うのにどきっとする。

「ホストじゃねぇよ。ずっと言ってんだろ」

「さっき話した、ただの小さいバーですよ」

人が増えたことでさらに話も弾み、みんなでポーカーをやってみたりもしてどんちゃん騒ぎだった。

「うわ、もう日付変わってんじゃん」

とタツくんが言った時、既に0:30を回っていた。

「そろそろ寝るか?」

全員が同意したので片付けに入った。

「紗季さんは廊下出て左の、奥の部屋で寝てください。拓也と一緒でいいですか。」

2人で頷く。「ありがとう」「ありがとうございます」

「あとソファに1人と」

「俺、ソファでいいよ」

「じゃあヤマが布団で」

「え、いや、じゃあ俺」

「いいから、いいから」

それぞれ歯を磨いたり、軽くシャワーを借りたりして、各々の寝る場所に向かった。拓也と一緒にベッドに入ると、お酒が入っていたこともあってすぐに眠りについた。

夜中、ふと目を覚ますとお手洗いに行きたいことに気がついた。外はまだ暗い。拓也を起こさないようにそっとベッドから出て、立ち上がる。喉も乾いている。

お手洗いで用事を済ませた後キッチンで水を飲ませてもらおうと、そっとリビングへのドアを開ける。机からパソコンの光が目に入った。見ると、蓮くんが座っている。起きてたのか。

先程と違う、部屋着に眼鏡姿の蓮くんに、心臓がサボっていた仕事を急ぐように動き出す。会釈をしてキッチンに向かうが、蓮くんが立ち上がって近づいて来た。キッチンの電気をパチっと点ける。途端に鮮明に見えた蓮くんの顔から、つい目を逸らしてしまう。

「喉、乾いちゃいましたか?」

「うん、お水貰おうと思って」

ソファで寝ているタツくんを起こさないようにと、小声で喋る。余計に胸が鳴る。

「起きてたんだね。」

「そう、卒論がね。」

「あぁ、大変そう。」

蓮くんが何も言葉を返さなかったので顔を見ると、目が合った。

「紗季さんってさ、」と言い、蓮くんの腕が動いたので顔を向けると、手が私の腰に伸びてくるところだった。

「え、」

何が起こるのか見当もつかなかったけれど、もしかして出番ですかと下半身がじんと疼く。蓮くんの次の言葉を待とうと目を見つめた。

ガサッ

反射的に音の鳴った方向を見ると、ソファからタツくんが起き上がってくる。口から心臓が飛び出すかと思った。

キッチンにのそのそと歩いて来てコップを2つ取り出し、冷凍庫から氷をひと掬いずつコップに入れて水を注いだ。1つを私に手渡してくる。

「どうぞ。」

「あ、ありがとう。」

動揺しながらも、なんとか応える。声が震えているのが、視点が定まらないのが、バレていないだろうか。タツくんがぐびっと水を飲み干すと、シンクにコップを置き、「蓮、お前も早く寝ろよ。」と、鋭く蓮くんを見つめた。

蓮くんは飄々と「わかってるよ。もう寝る。」と答える。タツくんが蓮くんから目を逸らして背を向ける。

「トイレ、借りるぞ」

「あぁ」

タツくんがリビングを後にし、ドアの向こうからまたドアの開閉音が聞こえた。2人きりになった緊張を隠すように水を飲む。

「俺の寝室、場所わかります?」

唐突に聞かれ、思わず頷く。まだ開けていないドアは1つしかない。

「じゃあさ、そこでちょっと待ってて」

「え、なんで」

「いいから」

「でも、」

「いいじゃん、とにかく、すぐ行くから。」

さすがにダメだ、断ろうと思い口を開こうとしたところ、髪を掻き分けて首にそっと手を添えられた。「ね?」と余裕を湛えた笑顔の蓮くんが目に入る。異論を唱えることが出来なかった。

「あ、わかっ…た…」

「うん、じゃあ先行ってて」

蓮くんは机に戻り、私はリビングを出た。廊下を歩き、初めて開けるドアを、音を立てないようにそっと開ける。

背後からザァっと音が聞こえた。叫び出しそうになるが、すぐにトイレの流れる音だと気がつく。急いで、しかし音を立てないように部屋に入りドアを閉めた。

トイレのドアの開く音が聞こえた時にはまだ、ドアノブを握っていた。必死で息を整えようとするけど、うまく息ができない。部屋の様子は暗くてわからない。

なんで私は蓮くんの寝室でぼぉっと立っているんだろう。この後、どうなるんだろう。全く予想がつかないわけではない。今自分が立っているのは、堂々と拓也に言うことができるような場所なのか?準備しましょうかと、また子宮が出しゃばる。

ガチャ。

ドアが開く。蓮くんが入ってきた。ドア横の机に置いてある間接照明を灯ける。

「お待たせ」

「いや、全然」

蚊の鳴くような声で答える。

「そう、さっきの話なんだけどさ」

さっきの話?なんだっけ。頭が混乱していて何もわからない。今も私の耳を隠していた髪の毛を、蓮くんの手がかきあげている。

「紗季さんって、」

あぁ、あの時の。思い出した。蓮くんは何か言いかけていた。

蓮くんの顔が私の右耳に近づいてくる。

「ちょっとだけ、俺の事好きでしょ」

どん、と心臓が大きく胸を打った。図星、という程でないにしても、胸を張って否定することはできなかった。顔がすぐ近くにある興奮もあって、どんな言葉を返すべきか見つからなかった。目が回る。

「え、ぁ、いや…」

冷静な思考が戻ってきたのか、何をするべきか混乱した頭でもやっと答えを出せたのか、とりあえず蓮くんの胸に手をぐいっと当てて体を離そうとした。その瞬間、ぐっと体を抱き寄せられ、抵抗しようにも力では敵いそうになかった。耳をくっと噛まれる。

「きゃ!いや、待って、蓮くん、離して?」

無理やり体を離して顔を向き合わせた。蓮くんは目を細めて微笑んでいる。

「なんで?紗季さんが部屋に来てくれたんでしょ。」

そう言われれば、そうだ。

「あと、大きな声出さないで。この家に防音室は無いから。」楽しむように言う。

今、ここにいることが誰かに知られてマズいのは私の方だと初めて気がつく。同時に、気がつくのが遅かった、とも思う。後戻りができる段階はとうに過ぎ去っているように感じた。

「待って、でも、やっぱり……」

それでも、最後の抵抗をしようとする。

「いいじゃん。俺も結構紗季さん好きだよ。」

愛の告白とは到底思えなかったが、鼓動が早まるのは止められない。下腹部がずん、と熱を持つ。

蓮くんがブラウスのボタンに手を伸ばす。1番上のボタンが、ぷつっと外れた。咄嗟に、蓮くんの手を掴み、「やめて、」と言う。

「動かないで」

そう言い放つ彼の目が冷たくて、心臓が止まったような気がした。ここで騒いで利がないのは私だ。どうにもならない。大人しく手を退けた。

「ありがと」と、おでこにキスをされ、またボタンを外すのに取り掛かった。

ボタンが全て外れると、ブラウスを腕から抜き取り、スカートのジップを下げた。スカートがはらっと重力に従う。

キャミソールと下着だけの姿になる。

私はパンツの前に手を持っていき、ささやかな抵抗をする。

蓮くんがキャミソールに手をかけ、ずり上げた。

「バンザイ」

そう言われても踏ん切りがつかず、動けないでいると、私の目をじっと見て同じ言葉を繰り返した。

「バンザイ」

私はどうするのが正解なのかを見つけられずに、意味もなく目を逸らした。どうにか助けを求めようと、蓮くんの目をもう一度見た。蓮くんの視線は私を真っ直ぐ刺し続けたままだった。怖くなって、キャミソールにかけられたままの蓮くんの手に触れる。

その手を弾き、溜息をひとつ漏らし、瞬きをする間に私から目を逸らした。キャミソールから手は離され、体ももう私の方には向いていない。

出て行くの?なんで?ごめんなさい。

彼を怒らせたかと思うと、なぜだかこの世の終わりのように恐ろしくなった。

「まっ……」

引き留めようとした時、彼が開けたのはドアではなく机の引き出しだった。私は訳が分からないまま眺めていた。蓮くんの右手が引き出しの中に隠れて、次に出てきた時にはハサミが握られていた。「えっ」と声が出て、恐怖に身体が固まる。蓮くんが私に向き直ると同時に、シャッと金属の擦れる音がしてハサミの刃が開いた。

私の肩に近づいてきた左手がキャミソールの肩紐をそっと掴む。右手に持たれたハサミも肩紐に添えられる。冷たい金属の刃が肌に触れてヒヤッとした。その時にようやく頭が働いた。

「待って、待って、ごめんなさい。」と急いで言い両手を上にあげる。ハサミは閉じかけていた。

「うん、そうだね、その方がいいな」

彼の口角がふわりと上がり、ハサミを机の上に置いた。一気に安心して、されるがままに脱がされた。

ブラジャーのホックを外される時に肩を丸め、腕から肩紐を抜かれる時に手を前に差し出した。

パンツにも手をかけ、するりと下まで下ろすと「足上げて」と言われたのでそれも言う通りにする。

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(2020年05月28日)

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